【完】夢見るマリアージュ

「うわあ、安心した。 断られたらどうしようかと思った。 ホッとしたよ。
俺城田さんと一緒に居る時間落ち着くし、安心するんだ。仕事の疲れもぶっ飛ぶよ。
また連絡するね。 おやすみ」

「おやすみなさい……」

去り行くタクシーを見送っても、ドキドキは止まってくれそうもなかった。

勘違いさせないで欲しい。甘い夢なんか見させないで欲しい。  そんな笑顔で笑いかけられたら、嫌でも期待してしまう。

北斗さんが去った後、空を見上げるとそこには頼りなさげな三日月が浮かび上がる。
まるで私の心のように直ぐに折れそうで心もとない月。

現実の厳しさは知っているから、夢なんて見させないで。 私は地味で冴えない女。 それなのに、近づきたくなる。

変わりたい。そう思い始めたのはこの時から

私があともう少し、北斗さんの隣で自信を持って笑う事の出来る女ならば……。
変わる事を、彼の隣に居たいと望む事を許される私なのだろうか。

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