婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
王太子の結婚
オールディス王国の王都は、王太子イライアスの婚儀を翌日に控え、どこもかしこも賑わっていた。

王国中の貴族が婚儀に参列するために続々と集まってくる。
式の後のパレードをひと目見ようと、田舎からやって来る一般人も少なくなく、小高い丘に建つ白亜の城を期待の眼差しで眺めていた。


王宮の奥深く、王族の居住区画の一室。

王太子イライアスは窓辺に寄り、城下町を見下ろしていた。

その表情は穏やかで、彼の機嫌がとてもよいことが現れている。

「殿下。このようなところで、いかがなさいましたか?」

イライアスより少し年上と思われる女官が、そっと近づいてきた。

「……セラか。町を眺めていたのだ。」

「町を、でございますか?」

「ああ、もうこんな時間だというのに、眠る様子はない。皆気が高ぶっているようだな」

セラはイライアスの言葉を受けて、窓の向こう側に視線を向けた。

「殿下のご結婚を祝っているのでしょう」

「あまり羽目を外すと、明日のパレードを見られなくなるぞ」

イライアスはにやりと笑った。

大勢の民が、自分の婚儀に熱狂しているのは悪くない。

「町では今夜、眠らない者もいるでしょう。ですが殿下はそろそろお休みください。明日は朝から休む間もないほどの忙しさです。体がもちませんよ」

「そうだな。そろそろ休むか」

イライアスは上着を脱ぎ、セラに渡す。

「オーレリアはどうしている?」

「明日の式の最終確認をされていましたが、先ほど寝室に入られました」
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