「まあ、身軽だよね、本人も。実家には戻らず一人暮らしだったし、大阪からこっちに来て一年も経ってなくて、物はあんまり増えてなさそうだった」

「渡瀬くんは、ふらっと表れて、ふらっと消えるイメージです」

卒業式の日も、この会社で会ってからも。

本当に千秋の人生の一部に撫でるように関わる。その一瞬で、千秋がどんなに心を乱されたかなんて知らずに、渡瀬は居なくなるのだ。

何時も何時も過去の人になる。そんな人とは、千秋は付き合えない。

テーブルにはメインディッシュが並んだ。砂本がフォークとナイフで肉を切る。断面が鮮やかなピンク色で、心臓の血の色が見えてるみたいだ。

「それって、卒業式の日に告白されたことが影響してる?」

「え……っ」

千秋のカトラリーを持つ手が止まる。