「あれ、リップ変えた?」

そう言ったのは滝川だ。お昼休みにお弁当を広げようとしたらそう問われて、千秋は照れくさくなった。

「あ……、はい……。ちょっと、あの、気分を、変えてみようかなと思って……」

今まで落ち着いたブラウンの色ばかり使っていた。会社だし、着飾る必要もないと思って、最低限のメイクに徹していた。でも、二十八年の人生の中で二人も異性に振り向いてもらえたと思ったら、自分に少しは自信を持っても良いのだろうかと思ったのだ。

そう思ったら、自然と明るいリップを選んでいた。鏡に映った自分はかなり照れくさい顔をしていた。

「えー、良いよ良いよ。雰囲気明るくなって、何時もよりかわいいよ」

滝川がそう言ってくれるので、午前中どきどきしていた気持ちがほっと安堵の息を吐けたことでやっと落ち着く。

「ちょっと派手かなとも思ったんですけど……」

「ううん、全然ありだよ。かわいいかわいい」

滝川がにこにこと言うので、だんだん恥ずかしくなってきた。

……実は、滝川に気付かれる前に、千秋のリップが変わったことに気が付いた人が居た。