「――なんでこの数日間の間に、イケメンセレブと結婚になるわけ? 藍、実は恋愛スキルが高かったの?」


渚が苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。

文句を言うべきか驚くべきか迷っているような、そんな口調だ。

兄代わりと似たような反応に少しだけ苦笑する。

仕事のできる婚約者は近日中に公表するべく準備を着々と進めている。

さらには化粧品の提携事業についての発表も兼ねるらしく、この期に及んで結婚に二の足を踏んでいるなんて言い出せそうにない。

とはいえ、あまりに急な展開と次元の違いすぎる話にどこか他人事のように感じてしまう。

これがもし恋焦がれた相手との結婚だったらなにか違っていたのだろうか。

結婚へ向けて粛々と進んでいく毎日だが、渚にはきちんと自分の口から説明をしたかった。

そのため副社長に、親友へ事の次第を話す許可を得て今に至っている。

同じ店舗勤務とはいえ、いつも昼休みを一緒にとれるわけではない。

今日はほかの同僚に頼んで休憩時間を変わってもらったのだ。

大っぴらに口にできない話のため、店舗から少し離れた場所にあるベーカリーカフェに向かう。

店内に入り、お互いにお気に入りのサンドイッチを注文した。