クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
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『ひとりで育てるなんて寂しいこと、もう言わせない』



その言葉にときめいたこの胸は、やっぱり今でも彼のことが好きなんだと思い知らせる。

自分の本心を、素直に全て言えたらどんなに楽だろう。

もし彼がそれを受け入れてくれたら……。

そんな幸せなもしもを想像して、現実に戻って、の繰り返しだ。





波乱のランチ会の翌日、月曜日。

頼を保育園へ預けるべく、私は頼とふたり病院の敷地内を手をつないで歩いていた。



「でーんでんむーしむーし、かーたつむりー」

「かーあちゅういー」



頼が好きな歌をふたりで歌いながら歩く、平和な時間だ。

ところが、そこへ現れる姿がひとつ。



「朝からずいぶんご機嫌だな」



その声に顔を向けると、そこには黒いジャケット姿の由岐先生がいた。

昨日のことを思い出して、胸がどきりと跳ねる。



「由岐先生…….お、おはようございます」

「あぁ、おはよう」



由岐先生は私の反応には気づくことなく、膝をついて頼に視線を合わせた。



「おはよう、頼」



いつもの頼なら、まだ慣れない人に対しては逃げてしまう。

けれど頼は由岐先生の顔を見ると、ぱあっと表情を明るくして「きゃーい」と彼にぎゅっと抱きついた。

この懐きっぷりはやはり、血のつながりを感じずにはいられない。



由岐先生はそんな頼に、少し嬉しそうに口元を緩めた。

いつもは鋭い目つきが多いのに、頼の前では優しい顔するんだよね。


  
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