~狂恋~夫は妻を囲う
「本当だよ」
「そう……」

「聖子が魁聖を紹介するって言った時も、まさか魁聖がこんなに彩羽に惚れるなんて思わなかった。
魁聖はね、本当は最低な男だから。
優しくも、可愛くもないんだよ。
本当は、俺よりもヤクザ組長にふさわしい男だよ。
アイツはまさに“死神”だよ!」

「やめて!!魁聖を悪く言わないで!?」

「だったら、言うけど!!!」
「………」
「魁聖が彩羽を手に入れる為に、両親を殺して周りの人間を彩羽から離れさせて、挙げ句…会社リストラさせた張本人でも……!!?」
「え……?」
「まだまだあるよ?彩羽を手に入れる為に、他にも人を殺してる!
魁聖は、そんな冷酷な死神なんだよ!」
「嘘……魁聖がそんな酷いこと……」
「俺も、魁聖には口答えできない。
だから、俺も魁聖に加担した。俺も最低な人間だよ!
俺達は、最低な人間なんだ……」

彩羽はただ、凍ってしまったように洋武を見ていた。

「彩羽。
俺と逃げよう」
「え……」
「俺が守るから、魁聖から逃げよう…!
このまま魁聖といても、魁聖は人を殺し続ける。
きっと彩羽のこと、将来的には監禁するつもりだよ?
俺はもう、全てを捨てる覚悟ができてる。
彩羽とまっとうに生きたい!」
「逃げる?」
「うん」
「ごめんね…それは無理だよ」
「なんで!?」

「魁聖に言われたの。
彩羽がいなくなったら、俺は壊れてしまう。
彩羽が俺のモノじゃなくなったら、彩羽の周りを全て消すからって。
そして何より………
私が!!
魁聖から離れられないの……」
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