貴方なんて許せる訳がない
一年後
 離婚から一年が経った。

 柚奈は、一歳と十か月。小さな靴を履いて公園をお散歩する。

「柚奈。あんまり急ぐと転ぶわよ」

「大丈夫だよ。僕がだっこするから」

 今、私の隣には匠海さんが居てくれる。


 
 離婚が成立してから

「瑠美ちゃんと柚奈ちゃんを幸せにしたい」
と思い掛けずプロポーズされた。

「でも……。何も子持ちのバツイチじゃなくても……。冨川さんには素敵な人が現れます」
とお断りしたのだけれど……。

「僕の部下だった頃から、瑠美ちゃんが好きだった」

「えっ?」

「同期だけど僕はあんな奴と違うから。生涯掛けて瑠美ちゃんと柚奈ちゃんを守ると誓うよ」

「冨川さん……」

「冨川瑠美、冨川柚奈になってくれないか」

「はい。よろしくお願いします……」


 再婚だからと躊躇う私に

「僕と結婚するのは初めてだろう」
と言われて……。

 結婚式も挙げた。

 そこには瑛のご両親もお祝いに駆け付けてくださった。匠海さんが知らせたんだと思う。

「瑠美ちゃん。幸せになってね。きっとなれるからね」
と言ってくださって……。
 柚奈と遊んで、そのままそっと帰られた。
 お義母さんたちの気遣いに涙が零れた。


 冨川さんのご両親もとても理解のある優しい方たちで
「お嫁さんと孫が一度に来てくれて嬉しいのよ」

「ありがとうございます。宜しくお願い致します」

「こちらこそ。瑠美さん、匠海の事、宜しくね」

「はい」
真っ白なウェディングドレスの私と、お揃いの可愛い真っ白なドレスを着た柚奈。

「綺麗だよ」
と匠海さんに言われて少し恥ずかしい……。

 もちろん私の両親も祝福してくれた。
「瑠美。幸せにね」
離婚でたくさん心配を掛けたから、幸せになることが何よりの恩返しなんだと思っている。

「うん。色々ありがとう」
これからは、ずっと笑顔で生きていくからね。心の中で両親に約束した。




 柚奈の養育費も滞りがちだった瑛には、もう養育費は必要ない旨を書いて書類を送った。柚奈の口座も解約した。
 これで瑛との接点は無くなった。
 二度と会う事もないだろう。


 その後、瑛が営業先のオーナーと不倫をして離婚した事が会社に知られる事となり、瑛は青森の営業所に左遷された。


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