貴方なんて許せる訳がない
社内結婚
 瑛(あきら)と私は社内結婚。

 美容室専用の大手化粧品会社で瑛は営業部、私は受付として働いていた。

 冨川 匠海(とみかわ たくみ)さんは瑛の同期で総務部の主任をしていた。

 受付の所属は総務部になるから、冨川さんは上司にもなる。色々教えて貰ったりお世話になっていた。

 穏やかで人当たりも良く皆んなに慕われていた冨川さんは女の子にも人気があった。

 受付業務は自社は勿論、来社する他社の方のお名前や役職名、お顔も覚えて対応しなければならず大変な仕事ではあった。

 そんな時、営業部の日高 瑛(ひだか あきら)さんが
「疲れた顔してるよ。美味しい物でも食べに行かないか?」
と誘われた。
 最初は受付の他の二人も一緒に食事に連れて行ってくれた。

 それがいつからか二人で食事に行くようになって、ある日
「瑠美ちゃん。僕と付き合って欲しい」
と言われ、特別嫌悪感もなかったから付き合うようになった。

 付き合い始めて半年が経って
「僕と結婚して欲しい」
突然の言葉に驚いた。

「えっ、でもまだ半年しか……」
結婚と言われて、そこまで私の気持ちがあるのかも悩んだし、まだ早過ぎると思ったのも確かだったけれど……。

「どうしても瑠美ちゃんと結婚したい」
と熱烈にプロポーズされた。


 受付仲間の美香と結子にも
「想う相手より想ってくれる人と結婚する方が女は幸せになれるって昔から良く聴くよ」

「そうだよ。日高さんは瑠美のことをあんなに大切にしてくれてるんだから」

「そうなんだよね……」

 正直に言って結婚って、こんなふうに決まっていくものなのかなと何処か他人事みたいな感覚がなかったとは言えなかったけれど。

 日高さんのご両親がとっても素敵なご夫妻で、私達もあんな夫婦になれると信じられたから結婚を決めた。



 寿退社なんて羨ましいと美香と結子にも祝福されて私は幸せなんだと思っていた。


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