暴君王子の恋の瞳に、私は映らない
なぜ、水浸しなの?



街中が茜色に染まる、夕暮れの放課後。



「ずっと会いに来なくて、ごめんね」



お母さんのお墓の前に、しゃがみ込み



「私のこと、恨んでるよね?
 最低な娘で、本当にごめんね」



懺悔の気持ちを込め

丁寧に手を合わせた、私の名前は



加藤 つぐみ

高校3年生。




胸まで伸びたゆるフワ髪を、耳に掛け


揺れるお線香の煙に

思い出したくもない過去を、溶け込ませる。


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