怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
本物の夫婦



 ***

 優月が腕に怪我をした。

 出血をして病院に運ばれたが傷口を縫合してもらうとそれもおさまり、幸いにも大事には至らなかった。けれど、傷跡は消えずに残ってしまうらしい。

 なぜ優月があのカフェにいたのかはわからない。本人はたまたまひとりでお茶をしていたのだと話していたが、たぶん違うような気がする。なにか別に理由があると思うが、それについてさらに問い詰めるようなことはしなかった。今聞くことではないと思ったからだ。

 それよりも、優月が怪我をした事実が俺にとっては重要だった。

 優月を切りつけた男はその後駆け付けた警察によって身柄を連行された。あの男の狙いは俺と一緒にいた女性――雪平律花だ。

 彼女は俺と同じ大学出身の弁護士で、離婚問題を多く扱っているのだが、とある離婚訴訟をきっかけにあの男から逆恨みをされていたらしい。

 半年ほど前、律花はあの男の元妻からDVを理由に離婚の相談を受けていた。男側は離婚については頑なに拒んでいたが、裁判の結果、離婚が成立。

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