社長、私はあなたの妻になる資格がありますか? 〜社長、嫌いになってもいいですか?シリーズ 第3章〜
そんなことをするような人じゃ、なかったのに
彼はあの雨の日から、たびたび仕事の合間に私の家に来てくれるようになった。
無気力で、部屋の片付けすらできない私だから、最初は家には来ないで欲しいと突っぱねようとした。
例え、どんな無様な姿を見せたとしても、彼氏にはどんなものでも綺麗な姿を見せたいという意地は、さすがの私にもあったからだ。

だけど、彼はそんな私の考えを知ってか知らずか、いつも
「僕が、君に会いたいんだ。いいだろう?」
と言っては、彼のおすすめだと言うレストランで買ったテイクアウトを持って、私の部屋にやってくる。
ちなみに住所は履歴書で知られていたので、最初に私の部屋に来たのも突然だった。

彼の気持ちは、とてもありがたいとは思った、けれども。
食欲があまり出なく、残してしまうことも多かった。
その分彼が私の分までぺろりと食べてくれたが、残してしまうという行為がそもそも申し訳ない。
そのことを何度も言っても
「気にするな」
としか言われないので、苦肉の策として、テイクアウトはゼリーだけをお願いすることにした。
今、唯一、喉に入るものがそれだけだったから。

すると今度は、どこから仕入れたのか、今女子に話題だというインスタ映えのゼリーを持ってきた。

……どうして?
そんなことを、器用にするような人じゃなかったのに……。
何が……誰が……あなたを変えたの?
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