ロート・ブルーメ~赤花~
二章

賭け


 ぱかりと、目蓋が上がった。

 微睡(まどろ)みとか、意識の浮上とかもなく突然目が覚める。

 そうして飛び込んできた目の前の光景に心臓が止まるかと思った。


「おはよ」

「っ!?」

 薄闇の中でもぼんやり光っているような金の髪。

 冷たいのに、どこか甘さを含んだ青い瞳。

 白磁(はくじ)の様に白い肌はなめらかで、その顔はどこまでも美しかった。


 そんな顔が起きたら目の前にあったんだ。

 息を止めて固まるのは普通のことだと思う。


「美桜?」

 不思議そうに紅夜のキレイな形の唇があたしの名前を呼んだ。


 その唇があたしの体のいろんな場所に吸い付いたことを思い出し、今更な羞恥(しゅうち)が襲い掛かって来る。

「あ、う……こぅ、や?」

 口がまともに動いてくれなくてかすれた声が出た。

 すると引き寄せられて唇が塞がれる。


 そのときになって、あたしは紅夜に抱き締められながら眠っていたんだと知った。


 ついばみ、甘嚙みするようなキスに熱い吐息が混ざり合う。

「美桜、お前煽ってんの? もっかいする?」

「ぅえ!? も、もっかいって……?」

 言葉の意味を理解出来ないような、ただ単純にしたくないような。

 そんな思いで聞き返す。
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