ロート・ブルーメ~赤花~

誘いの交換条件


 目深にフードを被った紅夜があたしの手を引いて静かになった街を歩く。

 夜の騒がしさが嘘のように、通りを歩いている人は他にいない。

 まるでゴーストタウンのような大通りを二人だけで歩いた。


 先を歩く紅夜は、フードのせいで顔が良く見えない。

 フードを被った紅夜にどうして隠すのかと聞いたけれど、隠すわけじゃないと言われた。


「太陽の光に弱いんだよ。朝はまだ大丈夫だと思うけど、あんまり浴びてると日光湿疹みたいになる」

 詳しく聞くと紅夜は生まれつき色素が薄いらしい。

 それでどこか体が弱かったりなんて事は無いけれど、肌の色素も薄いからか日の光に弱いのだとか。


「あ、じゃあもしかしてその髪と目は……」

「そ、地毛だし、カラコンなんて入れてねぇよ?」

 そう言ってフードの中から試すような眼差しがのぞく。


「気持ち悪い?」

 聞いてくる声からは感情が読み取れない。

 ただ、聞いてみただけという感じ。


 でも、そう聞くって事は誰かにそう言われたことがあるのかもしれない。

 そう思うと、心臓がギュッと苦しくなって泣きたくなってくる。


 あたしは繋いでいる紅夜の手を両手で包み、「気持ち悪くなんてない」と答える。
< 73 / 232 >

この作品をシェア

pagetop