もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編
番外編(時系列はバラバラです)

二人でクリスマスを

 頬に雪がポツンと落ちたのに気が付いたのは、九歳の冬だった。

 雨が降り、風も吹くようになったが、それでも結界の中は外と比べるとまだまだ威力が弱く、長雨は降るけどスコールのような大雨は降らないし、台風みたいな天候になることもない。
 そして雪が降ることも今まではなかったのだ。

 今年は去年よりも朝晩が冷え込み、最近では畑の土に霜柱が立っていたし、外の水にはうっすらと氷がはっていたからそろそろ結界の中でも雪が降るかもしれない、とは思っていたのだ。

 この地方は冬はかなり寒く、雪もニメートルは積もる。それをセフィーに聞いた時には一度結界の境界まで見に行ったことがあったが、その時は結界を境にして向こう側は雪が私の身長よりも高い場所まで積もっていて何も見えなくてとても驚いたものだ。

 あの雪の断面図は衝撃だったな……。結界の中は、曇ってはいたけど雨も降ってなかったしね。

「雪……。日本だったら、そろそろクリスマスの時期かな」

 初雪はクリスマスを連想する。育った場所では雪はそれ程積もらなかったが冬は毎年降っていた。

 クリスマスなんて、就職してから一度も楽しい記憶もないけど……。シングルベルか、なんて気にしていられたのも就職して最初の二年くらいだったし。年末年始も休めたのは多くても二日くらいだったしな……。

 街を彩る赤と緑よりも、仕事の日々を思い出して気が重くなる。

 うん。もう関係ないんだから、忘れよう。今年は結界の中も少しは雪が積もるかもしれないし、少し準備をしておこうかな。

「クリスマス、とは何ですか?雪に何か関係することなんですか?」

 畑の霜よけや雪かき用のスコップのことを考えていると、セフィーに尋ねられた。

「雪には関係ないんだけど、年末前の全世界的な冬の行事の一つだよ。まあ、本当はキリスト教っていう宗教の行事なんだけど、日本ではキリスト教の信者じゃない人もケーキを食べて、ツリーを飾って皆でパーティをして騒ぐ日だったんだ」

 私がクリスマスパーティーなんてやったのは、大学時代までだったけどね。

「……ケーキとは確か甘いお菓子の一種でしたね。ではツリーとは何です?」
「ツリーは、もみの木にリボンや飾りで飾り付けした物だよ。てっぺんに星を飾ってね。なんでだかは知らないけど、クリスマスにはツリーを飾ることになっているの。あとはサンタクロースっていう、白い髭で赤い服を着たおじいさんが、トナカイに乗って空からプレゼントを配りに来るんだよ」

 クリスマスにはツリーがつきものだけど、何でツリーを飾るのかはそういえば知らないや。ヨーロッパではきちんと意味があるんだろうけど、日本人は騒げればいいって感じだったしね。

「……なんですか、そのサンタクロースって人は。ルリィの世界ではトナカイが空を飛ぶのですね」
「いやいやいや。飛ばないよ!なんというか、おとぎ話みたいな感じなの!そう言われているってだけで、プレゼントを子供の枕元に置くのは親だから!」
「?なんだかよく分からないですね。……でも、そのツリーというのは、何故もみの木なんですか?もみの木はこの世界のどの木になるんでしょう。もみの木でなければダメなのですか?」

 えっ?なんでってそういう物だから?あ、でも常緑の針葉樹の木なら他の木でも使っているんだっけ?でも、日本だと生木なんて、大きなモニュメント以外はほとんどなかったし……。
< 1 / 15 >

この作品をシェア

pagetop