秘書の弘瀬さんが淹れてくれたコーヒーは『ヘンリーズコーヒー』で販売されている一番人気の『オリジナルブレンド』だった。コーヒーの王様と称されるジャマイカ産のブルーマウンテンを直火焙煎したコーヒー。
コーヒーの酸味や苦み、コクの三拍子の比率が黄金比で、日本人の口に合い、万人受けする味。


神戸社長とは連絡先を交換して、『帝商フーズ』本社を後にした。

神戸社長からほとんどの事情は教えて貰ったが、私は平介伯父さんの携帯に連絡を入れた。

でも、繋がったのは留守番電話サービス。

『麻莉です。至急お話したいコトがあるので、折り返し連絡を下さい…待ってます』と伝言を録音した。


私は生まれながらにして父が居なかった。
母の話では父は中東の国からの留学生だったと訊いた。

容姿は日本人の母と同じで黒髪で白い肌だけど、瞳は父に似て青く澄んだ瞳を持っていた。

シングルマザーで高校教師をしながら私を育ててくれた母も四歳の時、事故で亡くなった。


その後は兄の伯父夫婦に引き取られた。

伯父さんは小さいながらも大手の建設会社『高宮建設』の下請け会社の社長をしていた。

私が引き取られた当時は一番上の勉君だけだったけど、勉君の下に三人の子供が誕生した。