エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
生まれてきてくれてありがとう

半分開けた窓から、秋の涼しい風が入ってくる。

今日は雅樹の休日。

友里は妊娠四か月目に入ったところで、腹部の膨らみはまだ目立たない。締めつけのないマタニティワンピース姿で、自分の部屋のベッドに横になっていた。

つわりで起きられないのだ。

子供のために頑張って食べても吐いてしまい、それでもスッキリすることはなく、体重は三キロほど減ってしまった。

そばには雅樹がいて、友里の腕に点滴の針を刺す。

自宅で点滴を受けられるのは医師の妻の特権かもしれない。

「産婦人科の先生に相談したんだ。電解質のバランスを整えてあげると、少しはつわりの症状が和らぐだろうと言っていた」

「ありがとうございます。水分取るのもつらいので、点滴してもらえてよかったです。今日は朝から寝てばかりで、すみません……」

友里が眉尻を下げれば、雅樹がベッドの端に腰かけて、ほっそりとしたその手を握った。「今は寝るのが君の仕事だよ。家事をやってはいけない」

雅樹の心配は過剰なほどである。

休日は家事の全てを雅樹が担い、仕事の時は契約した家政婦に来てもらっていた。

クラークの仕事も辞めることになった。

『出産子育てが一段落して、また働きたいと思ったら働けばいい。その時は応援する。今は家にいて、お腹の子供たちを守ってくれ』

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