ジェドは、今日もまた貴族会へ出ていた。

煌びやかな開けた一階会場とは違い、そこは三階にある建物のオーナーのプライベートルームの一つだ。

三階の個室にまで、階下からの貴族たちの賑わいが鈍く響いてくる。今日も飽きずに政治の話やら貴族特有の自慢話やらが行われているのだろう。

組み合わせた手に口元をのせた彼は、わずかな雑談を前に、完全に興味を外してそんなことを思う。

「グレイソン伯爵は、さすがにご結婚前とあって気も緩められていることでしょう。あなたは真面目過ぎるところがあるから、少しは楽しむ心を持った方がいい」

名前を呼ばれて、ようやく周りの会話が耳に入る。

目を向けると、円陣を組むようにして九つの皮張り椅子が置かれていた。誰もがジェドより一回り以上は年上の貴族たちだ。

「気なんて」

ジェドは手を解き、隙のない目でじっくりと構えて彼らを見据える。

「残念ながら全く緩みません。むしろ、ずっと普段以上に気を張っていますよ」

室内の空気が、一瞬にして緊迫したものに変わった。ほんのしばし本題からそれていた彼らが、臆して息を呑む間を置いた。

「――さすが、国が誇る最強部隊の〝主〟だな」

薄い唇の乾きを舐め、一人の紳士が沈黙を破る。

「元は最強の戦士領主という血筋も、君を見ていれば確かにとうなずける」

「誇張しすぎですよ」