みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 急いで振り返ると、杉山課長だった。
 口調はすこし厳しめだったけれど目が笑っていた。

 ほっとして、「すみません」と頭を下げた。

「めずらしいわね。尾崎さんが。何かあった?」
「いえ、少し寝不足で」

 親身に尋ねてくれる課長に恐縮しながら、あいまいにごまかした。


「ちょっと話があるのよ。奥に来てくれる?」と奥の応接室に通された。

「なんでしょうか」
 なにか、やらかしたっけ?
 頭のなかで必死に考えていると、向かいに座っている杉山課長は少し腰を浮かして背筋を伸ばした。

「単刀直入に言うわね。あなた、正職員になる気ある?」
 課長は眼鏡の奥からわたしを見据えた。

「堂島くんの穴を埋めないといけないっていう話になって、わたしは尾崎さんを推薦したいと思っているんだけど。たしか、司書の資格持ってたわよね」

「は、はい。大学で取りました」

「どう? やる気ある? それとも先生に戻ることを考えているのかしら」

「いえ、それはないです」
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