エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
6.未完成のパズルピース
 目覚めた時は、記憶が曖昧だった。

 無機質な天井と蛍光灯。遠くに聞こえる足音と女性の声。
 それらをぼんやり感じつつ、ゆっくり目を動かし、点滴があるのがわかった時点で状況を察した。

 まさか自分が気を失って病院へ運ばれる日が来るなんて。

 ゆっくり指先を動かし、生きていると感じて安堵の息を吐いた。
 すると、シャッとカーテンが開かれる。

 びっくりして視線を向けると、女性看護師が私を見て目を丸くした。

「あ、気付いたのね。どう? どこか気分が悪いところとかない?」
「……あ」

 どのくらいこうしていたかわからないけれど、乾燥のせいか声が掠れた。
 思うようにスッと声が出なくて、ひとまず無言で首を縦に振る。

「そう。貧血で倒れちゃったんだと思うんだけど、原因はきちんと検査してからになるわね」
「はい」

 ようやく声が出せてほっとする。
 看護師は点滴を確認しながら、口を開く。

「さっきまでご家族いらしてたんだけど……今、少し席を外してるみたいね」
「そうですか」

 家族……お父さんとお母さんかな。ものすごい心配させただろうな。

 不慮の出来事とはいえ、得も言われぬ罪悪感に駆られ、点滴の管に視線を向ける。

「じゃあ意識が戻ったって先生に報告してくるわね。先生が来てから、帰宅できるかどうか判断してもらうから」
「はい」

 小声で返した時にノックの音が飛び込んできた。「ご両親かしら」と看護師が顔を向けたら、ドアが開く。
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