外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
お見合い反対同盟の結束



 雲ひとつない澄み切った青空の下、白や濃いピンクの梅の花が美しく咲き誇る。

 三月に入り、厳しい寒さは日に日に和らいでいるように肌で感じる。

 今日も日差しが春を予感させ、暖かく明るい穏やかな陽気だ。

 しかし、そんな爽やか日和とは対照的なのが私のこの暗い表情。

 格式高い料亭の渡り廊下を歩きながらガラス窓に映る自分の顔を見てみると、どんより曇った冴えない顔。空なら今にも雨が降ってきそうだ。

 身にまとう金の刺繍が入るサーモンピンク色の着物は華やかだけれど、私のこの表情ですべてが台無しになっている。

 モルディブから帰国して約一週間後。

 早速、葉子伯母さんがお見合いの話を持ってうちを訪れたらしい。

 私はちょうど仕事の打ち合わせで外出していたけれど、私が不在だろうともちろんお構いなし。

 当の本人がいなくても伯母と母はふたりで盛り上がったようで、仕事から帰宅すると満面の笑みの母から相手の方のお見合い写真を手渡された。

 本当にお見合い話は進んでいるのかと、母の差し出す重厚な表紙を目にしながら思い知らされた。

< 109 / 254 >

この作品をシェア

pagetop