過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
慰めの一夜
「ん……あっ……」

体の表面を怪しく滑る熱い手に、思わず甘い声が漏れてしまう。熱い唇で耳朶を食まれれば、ますます声を押さえられなくなっていく。

「はぁ……ん……」

耳に舌を差し込まれ、直接響く淫らな音に否応なしに体が震える。
私に覆いかぶさった男は、その反応を楽しむかのようにくすりとこぼすと、体中に口づけを落とし始めた。
耳元から首筋へとゆっくり移動した男の唇は、とうとう胸元に到達してその動きを止めた。

様子を伺おうとそっと瞼を開けると、薄暗がりの下で欲情した鋭い視線が自分の胸元に注がれていると気づいて、途端に頬に熱が集まった。

「綺麗だ」

まだ恥ずかしく思うだけの理性は残っていたようだ。
今さらながら腕で胸元を隠そうとしたものの、一瞬速く動いた男の手に取り押さえられてしまう。私の両手を自身の片手で掴むと、頭上に易々と抑え込まれてしまった。
同時にもう片方の手が、大きくも小さくもないふくらみに触れた。

「っ……」

恥ずかしさで瞬時に顔を背けたのに、胸の頂をざらつく舌に掠め取られた途端にビクリと体が跳ね、思わず視線を戻してしまった。
まるで見せつけるかのように目を合わせながら、男はゆっくりと舌を這わせていく。

「あぁ……」

体を駆け抜ける強烈な快感に、悲鳴のような甘い嬌声が上がる。執拗な舌から逃れようと身を捩るも、力の抜けきった状態ではわずかに身じろぐ程度にしかならない。
そもそも、本気で逃れようとしたのではないと、相手もわかっているだろう。ふっと笑った男は、まるで私をあやすように髪を撫でた。それが思いの外心地よくて、思わず目を細めてしまう。

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