スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
Ⅲ*

視察へ





「……効率が悪い。次までに改善し、成果を示せ」


「はっ……はいぃ!」


 たまたま城内を散策中に見かけたレイと兵士のやり取りに、彼に声を掛けようとしていた私の動きはピタリと止まった。


 地を這うような低い声で唸るレイの声は、実は優しい人だと分かっていても不思議と自然に背筋がピンと伸びた。


 今にも殺されるのでは無いかと勘違いした兵士は、身体を震わせ涙目になりながら踵を返し一目散に廊下を駆け抜けていく。


 カイルさんと共に印象改善計画を立ててから五日が経とうとしているけれど、問題の山積みだ。


 私の前で見せる穏やかな顔とは真逆の、見る者全てを恐怖のどん底に陥れるような顔を見事に作り上げるレイに、内心どうしたものかと悩まされていた。


 眉間に深く刻み込んだしわを作り上げたまま、レイは動き出そうとするけれど、私の存在に気がつくと表情はガラリと変わる。



「ルフィア……!城内の散策中か?」



 あの声は一体どこから出していたの……?


 何一つとして普段私に向ける変わらないレイの声に、若干ほっとしつつヒラリと手を振って見せた。





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