囚われて、落ちていく
羨望
お互いにお互いを想い合っている二人。
お互いに落ちていく━━━━━


「つむちゃん、ジャケットありがとね!」

その日の夜。
刹那に何度も抱かれ果てて、少しぐったりして横になっている都麦。
肘枕をし、都麦の頭を撫でている刹那。

「うん…」
「僕にも何かプレゼントさせてね!」
「え?いいよぉ。
私はいつも刹那さんにしてもらってばっかだし……」
「ダーメ!
考えておいてよ!」


そんなある日。
久しぶりの刹那の休み。
「つむちゃん、今日何したい?」
朝食が済んで、ソファに並んで座っている二人。
身体ごと都麦の方を向き、顔を覗き込むようにして言った。
「デート…したいな……」
「了解!じゃあ…用意して出ようか?」
「うん!」

「おはよ!兄さん、都麦ちゃん」
「おはよ、つむちゃん乗って?」
マンションのエントランスを出ると、瞬作が待っていて当然のように後部座席のドアを開けた。

「え?え?刹那さん、今日お仕事なの?」
「そんなわけないでしょ?
今日一日、ずーっとつむちゃんといるよ!」
「でも、瞬作さん…」
「瞬作のことは気にしないで?」
「都麦ちゃん、気にしないでいいんだよ?
俺はあくまでも、兄さんの部下だから」

「でも、今日はプライベートだよ?
会社の社長さんは、プライベートも部下に運転手させるの?瞬作さんだって、お休み必要でしょ?」
「そうだよ。瞬作の……僕の部下のことなんて気にしないで」
そう言って、少し強引に車に押し込んだ。

「刹那さん、ゆっくり歩いてデートしよ?
散歩がてらゆっくり歩くのも楽しいよ?」
「それって、瞬作の事を気にして言ってるの?」
「それもあるけど、刹那さんと二人でいたいってのもあるよ」

「妬いちゃうなぁ。瞬作だからいいけど、他の男だったらそいつのこと……」
「え?」
「ううん。何でもない…どこ行く?」
都麦に口唇を寄せて囁いた刹那。
その嫉妬からの狂気を隠すように、都麦の口唇に軽くキスをしたのだった。
< 14 / 58 >

この作品をシェア

pagetop