囚われて、落ちていく
「ただいま、つむちゃん!」
「おかえりなさい!刹那さん!今日もお仕事お疲れ様!」
玄関で出迎え、刹那から鞄を受けとる都麦(つむぎ)
「フフ…ありがと!」
「……/////」
フワッと微笑む刹那に、胸が高鳴り顔を赤くする都麦。

「可愛いなぁ、つむちゃん!
すぐ顔を赤くするんだから!
じゃあ…もっと赤くなることしようか?」
「へ///?」
刹那の綺麗な顔が近づいてくる。

「ンンン……刹那…さ…」
口唇が重なり深くなる。
バサッと、持っていた鞄を落とした都麦。
「ん…可愛い…つむちゃん。
このままだと、ベッドに連れていきたくなるからここまでね!」
都麦は耳まで真っ赤にし、首を何度も縦に振った。


ハイスペックな刹那とごく普通の都麦。
この二人がなぜ、夫婦なのかと言うと……

出逢いは、都麦が大学一年生の時。
都麦が当時バイトをしていたカフェに、いつも刹那が閉店間際に来ていたのが始まりだ。
都麦は一目惚れで、閉店間際に来る刹那の応対をするのをいつも楽しみしていた。

刹那も、穏やかで柔らかい雰囲気の都麦に癒されていた。この時だけはなぜか、自分がヤクザだということを忘れられるのだ。
しかもとても穏やかで心地よく、優しい気持ちになれるのだ。
最初は挨拶だけだった二人だが、次第に少しずつ心を通わせていった。(もちろん都麦には、自分がヤクザ若頭だとは隠し不動産会社の社長だと言っている)
丸四年そんな生活を続け、大学卒業したのを期に都麦は思いきって刹那に告白したのだ。

それから刹那と都麦は一気に心を通わせ、結婚したのだ。


「ん!美味しい!」
「ほんと!?良かったぁ。
いつも緊張するの。お仕事頑張ってる刹那さんに不味い料理なんて食べさせられないし……」
「……////」
「ん?刹那さん?」
「なんでそんなに可愛いの?つむちゃん」
「へ!?」
「ほんっと、純粋だよね……!
僕にはもったいないなぁ」

「そんなの、私のセリフだよ!」
「え?」
「刹那さんは自分の魅力がわかってないよ!
カッコ良くて、優しくて、賢い上に会社経営者。
そんな人と、私みたいな凡人が知り合えたばかりか結婚してくれた。これ以上ない、幸運なんだよ!」
都麦は力説するように言った。
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