囚われて、落ちていく
警告
次の日━━━━

「おはよ、兄さん」
朝、マンション前で待っていた瞬作が運転席から出てきて、後部座席のドアを開けた。

「ん。
瞬作、至急調べて会わせてほしい奴がいる」
乗り込んだ刹那が、運転席に乗り込んだ瞬作に言った。
「誰?」
「都麦の高校の時の元彼で“東矢”って奴」
「東矢?」

「あぁ…大至急だ」
煙草を咥えた刹那が、目だけで瞬作を見た。

「わかった」

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事務所の社長室。
仕事が終わり、デスクで煙草を吸っている刹那。
「あーー、胸くそ悪い……」
煙草を指で挟み、見つめながら言った。

愛してやまない都麦から、自分以外の…しかも煙草の臭いがする。
許しがたい事実。

「兄さん」
そこへノックして瞬作が入ってきた。

「ん?」
「わかったよ。都麦ちゃんの元彼。
“相沢 東矢”」
「で?」
「俺と同じ大学だった。まさか“あの”相沢だったなんて……」
「知り合い?」
「ううん」
「なのに、知ってる風じゃねぇか?」

「だって、よく比べられてたから」
「は?」
それまで窓の外をみながら瞬作の話を聞いていた刹那。
そこで瞬作に向き直った。

「昔、ちょっと話したじゃん!
黒王子と白王子って言われてたって」
「あー、じゃあ…白か!」
「そう」
瞬作も刹那程はないが、容姿の整った男。
大学では、ファンクラブがあり東矢とよく比べられていたのだ。

家業のせいで、人を寄せ付けないようにしていた瞬作は“黒王子”
穏やかで、優しくいつも友達に囲まれていた東矢は“白王子”と言われていたのだ。

「どうする兄さん。
ここに連れてくる?」
「いや、行く」
「じゃあ…車、回してくる」

そして数十分後刹那は、東矢の勤める会社の前にいた。
更に数十分後、東矢が退社してくる。
瞬作が車から降りて、東矢の元に向かった。

「相沢」
「え?」
「覚えてる?俺のこと」
瞬作の整った顔に、近くにいた社員達が注目する。

「………一条?」

「うん、久しぶり。
重要な話があるんだ。来てよ」
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