囚われて、落ちていく
「確かに不動産会社の社長です」
「え?てことは、やっぱ……
あの…ちょっと聞いていいですか?」
「はい」
「旦那さんって、ヤク━━━━」

「一条さん!お待たせ!
ごめんね、かなりお待たせしちゃ………
遠堂さん、どうしたんですか?」
「あ、いや…
………なわけないよな…
じゃあ、僕はこれで…!」

遠堂はまさか目の前にいるいかにも癒し系の女が、ヤクザの女なわけないと自分にいい聞かせていた。

「━━━━━━よし!終わりました~!
どう?」
「…………はい!ありがとうございます!
フフ…すっきりしたぁ」
「一条さん、お似合いですよ!」
「嬉しいです!」
都麦は鏡越しに微笑み、引田に言った。

会計が終わり、帰ろうとする都麦。
「あ!一条さん!」
「はい」
「私、今から昼休憩なんだけど、一緒にランチしない?」
「え?あ、ちょっと待っててもらえますか?」

都麦は一度、刹那に電話をかけた。
『つむちゃん?』
「あ、刹那さん、お仕事中にごめんね。
今終わったんだけど、ランチに誘われて…行ってきていい?」
『相手は、誰?』
「引田さん。私の髪の毛切ってくれた人だよ」
『んー、わかった。いいよ。行っておいで?』
「うん、ありがと」
『…………あ!』
「え?」
『ランチどこで食べるか、ちゃんとメールちょうだいね』
「わかった」

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「一条さんって、わざわざ旦那さんにどこに行くにも連絡してるの?」
「え?あ、はい」
「凄い…」
「心配性な人なんです」

「息、詰まらない?」

「え……?」
「あ、ごめんね…!
私はそうゆうの、苦しくなるから…
元彼がすっごい束縛する人だったんだけど、仕事中とか関係なくしょっちゅう連絡きてたの。
“今何してんの?”とか“誰といるの?”“どこにいるの?”って、とにかくしつこくて……
信用されてないみたいで、嫌だった。
段々息苦しくなって、別れたんだけど別れるのも大変だったなぁ」

「そうなんですね…
信用……か」

引田と別れ、なんとなく街をぷらぷらしている都麦。
するとスマホが鳴りだした。
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