囚われて、落ちていく
事務所に着いた刹那。

社長室に入ると、ある女が飛びつくように抱きついてきた。
「刹那様~おはようございます!」
美波(みなみ)嬢、離れてくれ。鬱陶しい…」

「いいじゃないですかぁ!
それより今日は、どこに連れてってくれるんですか?」
「どこでも。君の行きたい所に連れて行くよ」

最近の刹那の不機嫌の原因が、この女・長谷部(はせべ)美波。
警視総監の孫だ。
警視総監と刹那の父親(一花組の組長)は裏で繋がっていて、先日の刹那の大量殺人の揉み消しの代わりにしばらく美波のワガママに付き合ってほしいと言われたのだ。

更に組長は美波が刹那を気に入っている為、それを利用し長谷部の弱みを握ろうとしていた。

「瞬作、もういいだろ?
俺は限界だ!早く、こんな女消し去りたい」
美波が化粧室に行ったので、刹那は瞬作に催促していた。

「兄さん、もう少しの辛抱だよ?」
「あー、都麦に会いたい!抱き締めたい!キスしたい!」
「兄さん!!」

「わかってるよ。ただ、俺にも限界はある。
それはわかるよな?」
突然、キリッと鋭く瞬作を睨み言った刹那だった。

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「風が気持ちいい~!」
美波に海辺のイタ飯店に行きたいと言われ、テラス席にいる刹那と美波。

美波は海を見ながら、はしゃいでいる。
そして刹那はコーヒーを飲みながら、煙草を吸っていた。
はしゃいでいる美波を見ながら刹那は、都麦のことを考えていた。

「ここって……」
「ん?」
「今人気だと言ってたよな?」
「はい!カップルに人気ですよ!
景色が素敵だし、お料理も!こうゆう所って女性は好きだから!」
「へぇー」

だったら都麦を連れてくれば、喜んでくれるのではないか?
そんなことを考え、思わず微笑む。

「……//////」
その穏やかな笑顔を見て、美波は顔を赤くする。
「何だ?」
「そんな表情、初めてみたなと思って……
刹那様は、そんな穏やかな笑顔をされるんですね?
素敵……
何を考えてたんですか?」

「内緒」
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