囚われて、落ちていく
若頭
【あまりにも幸せ過ぎるから、恐ろしい事が起こるんじゃないかって……
その前触れなんじゃないのかなって…】

そう━━━━━
これから都麦は……益々、刹那の深すぎる“狂愛”にハマっていくのだ。


それから数日後の、天気のいい昼下がり。
刹那と都麦の住んでいるマンション前に、一台の高級車が停車している。

都麦が買い物に出てきた。

すると、高級車の運転席から男が出てきた。
「こんにちは。
一条 都麦さんですね?」
都麦に声をかけてきた。

「え?は、はい」
「僕は、長谷部警視総監の令孫・美波様の執事で笹原(ささはら)と申します」
「はい…あの、私に何か?」
「美波お嬢様より、大切なお話があります。
ご同行願いますか?」

「え?あ、申し訳ないのですが、刹那さ…いや、主人に一度許可を得ないと難しいんです。
なので、また後日にしていただけませんか?
今日、主人にお話しておきます」
都麦は頭を下げ、その場を去ろうとする。

その都麦の背中に、笹原が声をかけた。

「“一条 刹那”の本当の姿を知りたくはないですか?」

「は?」
思わず、振り返る都麦。

「一条不動産の社長。
……………ではないんですよ?貴女のご主人は」
「え……?」

「まぁ、正確には一条不動産の社長であり、もう一つ重要な顔がある」

都麦を見据える笹原の表情が、あまりにも恐ろしい。

この人は、刹那さんの何を知っているのだろう。
この心の胸騒ぎは、何だろう。

都麦は恐ろしいと思いながらも、笹原の視線から目を反らせなかった。



「参りましょう。一条 都麦さん」

晴天の空。
しかし今は、都麦の心の中を反映するように黒い雲に覆われ始めていた。

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