「……顔を上げて欲しい」

そう言うと、ようやく彼が顔を上げた。
彫が深く、くっきりとした顔立ちは、大衆に受け入れられる顔だろう。
だが特に目力は強く……むしろ強すぎて、つり上がった目元が正直恐いとさえ思うぐらいの威圧感と冷たい印象を与えていた。


「いきなり言われても、信じられないのが本音だ」

確かに写真を見ると、信憑性はあった。
彼の幼い頃の写真は、彼女の息子によく似ている。笑う時に目元が柔らかく垂れ下がる様子も、口角の上げる角度も。
それに一番の特徴は──亜麻色に近い、栗色の縮れ髪。
彼の成長途中の写真は、髪の毛が次第に黒く真っ直ぐなっていく様子が記されていた。


確かに彼女の息子の碧維君は、母親似だろう。
顎の輪郭、鼻筋の高さはコピーのようにそっくりだ。よく目につくそこが似ているから、余計にそう感じさせる。
だがパーツ毎に切り取ると、目元も口も彼の幼い頃を貼り付けたようにも見える。
今の姿とは全く違う、写真の中の彼のパーツを。