「あそこすっごく音響が良いんだよね。しばらく私もあそこに立ってないし。演奏させてよ」

確かにラークホールは、クラシックのコンサートを行うホールとしては、日本で一番の音響と言ってもいいだろう。だか基本的に、日本トップのプロオーケストラ団体など複数の団体とフランチャイズ契約をしているので、空いている日は激戦となっている。


「いいですよ。本日メンテナンス日なんで、空いてますが。演奏しますか?」

あっさりと彼が了承するので、逆に私達三人が驚いて顔を見合わせた。

「あ、でも私は今日は予定が……蒲島先生行ってきてよ」
「だったら土屋君がリハーサルついでに弾いたらいいんじゃないか?」
「えっと、誰と誰が演奏をできるってことです?」


三人でごちゃごちゃ言ってる中、彼は声を張り上げて「但し条件があります」と。

「先に、晶葉さんに演奏させて欲しいんです」
そう言って目を細めて、私達を見つめた。


「実は協力して欲しいことがあるんです」

彼女を想う彼の表情は、写真の幼い子供の頃の写真と……子供の碧維君に、非常によく似ていた。
彼女はきっと、こんな彼の姿が好きだったんだろうなと、少しだけ納得する姿だった。