三人で公園を出ようとした瞬間、出口付近に車が止まった。

(嘘、だ……)
助手席のドアから現れたのは──昂志郎さんだった。昂志郎さんが、私達の目の前に立つ。
視線はベビーカーの碧維と、隣の秀機君に向けられていた。


「君は結婚していないはずだが、その人が子供の父親なのか?」
「……あなたには関係ないわ」
視線を反らし、秀機君の袖口をぐいっと掴む。

「行きましょう」
そう小声で言って、彼の横を突っ切って行く。
そのままずんずんと道路を進み、途中の信号でようやく足を止めた。


「あの人は?」
本当は言うべきではないのは知ってる。
この子の父親が誰なのか、誰にも口を割ったことはない。誰にも言う気はなかった。
だけど、秀機君には教えなければいけないと思った。

「……この子の父親なの」
「えっ?」

驚き目を見開いて、私を見つめている。


「でも、もう会えない。だから一人で産んだの」

何か言いたそうな顔をしていたが、それを振りきるように歩いていく。「誰にも言わないでね」と吐き捨てて、信号が変わった交差点を足早に家路を急いだ。