小さな願いのセレナーデ
「付属高校からの依頼で、下里さんにレッスンして欲しい人が居ると」
「えっ、無理ですよ」

付属高校は前の校舎のあった場所、ここから電車で一時間程の距離にある。
確か高校の時間割だと、大体七限目の授業が終わるのが十六時を過ぎる。だから高校からここに来るにも、こちらが出向くにも、しっかり一時間のレッスン時間を確保すると保育園の迎えに間に合わないのだ。
だから付属高校生のレッスンは基本的に受けていない。

「一応水曜日は六限目で終わるでしょ、うちの高校」
「そうですけど、私も水曜日は三時まで外せないレッスンありますし、高校に出向いて四時にレッスン開始しても終わるのか五時で、そこからこっちに戻って迎えだと…」
「だから、自宅でして欲しいんだと」
「えっ?」

どうやら自宅がここの場所と、高校までの中間地点に住んでいるらしい。
学校まで片道三十分の距離なので、水曜日なら四時までには自宅に帰れる。だから水曜日の夕方四時から五時まで、自宅でレッスンして欲しいとのことだった。
大雑把な住所を聞くと、確かに高校と中間地点、片道三十分かからない距離だった。五時にレッスン終了だと保育園の迎えにも間に合う。
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