灼けるような恋の先。

喜びの悲しみ





晄達の前で恥ずかしめを受けた日から約1ヶ月。



今日は久々に樹と一緒にデートをしている。






「俺海って好きなんだよなー。特に夏じゃない今くらいの時期」



「少し切なくて私も好きだな」



「だろ?」






秋の人のほぼ居ない海に座ってそんな話をする樹。



普段はこんなふうにちゃんと会話もできるんだけど、暴走だけしなければな。






「私今日サンドウィッチ作ってきたんだー」



「朝から何か作ってたと思ったらサンドウィッチか。いいな!」



「でしょ、久々のデートだったから張り切ったんだ」



「はー、可愛いな菫」






朝から作ったサンドウィッチを出す私に笑ってキスする樹は優しい。



こんな穏やかな時間が毎日だと本当いいんだけどね。






「はい、どうぞ」






サンドウィッチを取り出して樹に渡す時、不意に胸の気持ち悪さが襲ってきた。






「う…」



「どうした?」



「いや、なんか気持ち悪い」






吐きそうな感じ。


突然来たそれになんだろうと疑問が残りつつまぁ堪えられないほどじゃないか、と不快感を耐える。






「大丈夫かよ」



「ちょっとだから平気」






私の言葉に樹はそうかと返してサンドウィッチを頬張った。






「うまい!やっぱ菫は天才だな」



「はは、大袈裟だよ。樹もサンドウィッチくらい作れるだろ」



「でも自分で作るよりうめーもん」






いい笑顔で言ってくれて、美味しそうに食べる樹の横で私はやっぱり食欲は出なくて少しだけ口に入れたあとは手が出なかった。






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