激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
五、居場所なし。
五、居場所なし

 ビールのジョッキが届けられると、美麻が笑顔で受け取ってくれた。
 先日の美麻の助けによって危機回避できた私は、お礼を兼ねて食事に誘ったのに、美麻は居酒屋を指定した。

 焼き鳥が美味しい居酒屋の半個室で、好きなだけ食べてもらうことにしたけど、本当に遠慮なく注文していく。見ていて気持ちが良い。

「あんたももう結婚式も中止したしダイエットは終わりでしょ。食べなよ」
「うん。厚切り牛タン頼んだよ」

 乾杯と共にお肉にかぶりつくと、美麻は豪快に笑う。

「救いはさ、まだ他の子らに優希さん紹介してなかったことよね」
「確かに。仕事が忙しくて全く友達に紹介する暇もなかった」

 向こうのご両親も優希の多忙さに、挨拶はこちらに出向いてくれたし。親戚への挨拶はあとでいいからと式の準備優先にしてくれていたもんね。
 向こうも新婦が変わるだけで式は困らないかな。

「で、ハワイの君ってどうなのよ」

 優希との電話を隣で聞いていた美麻にはお見通しか。
 私も後ろめたいことはないので、掻い摘んであの旅行のことを話した。
「おー。スーパーヒーローじゃん。結果的にお姉さまと浮気野郎にざまあできて良かったね」
 そこは感謝している。
 あの二人に同情も小ばかにされるのも屈辱だった。
 抱かれたことは言わなかったけれど、勘がいい美麻にはもし宇柳さんを見たら気づかれてしまう気がして、内心穏やかではない。
「でもねえ。見てよ」
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