片恋

「真桜」

「……」

「真桜、大丈夫か?」

「……えっ?」

真っ白だった頭が、名前を呼ぶ声で現実に戻される。

自分の席でじっとしている私を見下ろしているのは、伊月くん。

いつの間にか、今井先生はいなくなっていた。

あれ? 私、ホームルーム参加してた?

記憶が飛んでいる。

「伊月くん、どうしたの?」

「ちょっと」

伊月くんが廊下をクイッと親指で示して、私は席を立った。

席を離れる瞬間、延藤くんと目が合ったけれど、気まずくてすぐにそらしてしまった。
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