獅子組と私

【勤務中】

飛鳥達四人は、一番奥の席でコーヒーを飲みながら煙草を吸っている。

そして時折、椎那に微笑み手を振りながら一服していた。

「いらっしゃいませ」
「今日も来たよ、エビちゃん」
「あ、村部(むらべ)さん、おはようございます」
「モーニングをお願い」
窓側の席に座りながら、注文する村部。
「はい」
村部はこのレストランの常連で、毎朝モーニングを食べに来ているのだ。

飛鳥「あれ、誰?」
道彦「さぁ?」
滉二「エビちゃんってなんなの?」
一朗「椎那ちゃんの苗字が“伊瀬”だからじゃないの?」
飛鳥「伊勢エビ?」
道彦「漢字違うし……」
滉二「だよね…」
飛鳥達が口々に話している。

呼び鈴を鳴らす飛鳥。
「はい」
椎那は他の仕事に忙しく、別の店員が現れる。
「君じゃないよ。椎那を呼んで!」
「え?あ、伊瀬さんですか?」
「そう。早く!」
「でも伊瀬さんは、今接客中なので私が承ります」
「だったらいらない」

「え……」
「僕は、椎那に会いたくてここにいるの。
椎那以外の接客は受けない」
飛鳥の言葉に、肩を落として店員は去っていく。

「伊瀬さん」
「はい」
「6番お願い」
「はい、わかりました」

「………ねぇ」
「え?」
「6番さんって、獅子組の幹部達よね?」
「あ、はい」
「どんな関係?最近よく来てるけど…」
「飛鳥くんは、恋人です」
「え?あんたなの?噂のクイーン」
「はい…」
「へぇー、紹介してよ?」
「え…?」
「職場の友人かなんかって言えばいいでしょ?」

この女は町北 桐絵(まちきた きりえ)といって、椎那の同僚だ。
小柄で控え目の椎那を、少々バカにしているところがある。
その為、獅子組のキングの彼女だと聞いて奪ってやろうと画策していた。

「飛鳥くん」
「あ!椎那!待ってたよ!コーヒーおかわりちょうだーい!」
「俺達も~」
「うん…」

「椎那?どうしたの?」
元気のない椎那の手を握り、見上げた飛鳥。
首を傾げて、窺うように問いかけた。

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