それから三日後。
白羽を連れ久しぶりに事務所に出勤し、仕事に出ている命。
白羽と住むようになって、基本的には自宅マンションで仕事しているのだが時々事務所に出勤しているのだ。

「神、わかりましたよ」

事務所で作業中の命に黒崎が耳打ちした。
「ん?」
パソコンから目を反らすことなく、黒崎の言葉に耳を傾ける命。

「市ノ瀬って男のことです。
名前は市ノ瀬 信太。
白羽さんの大学の同級生で、同じ学部だったようです」
「そう」
「しかも…」
「ん?」

「元恋人だったようです」

「………」
「神?」
命は無言で、デスクをガン━━━!!!と殴った。

その衝撃でデスクの上にあった書類や小物、白羽が淹れたコーヒーカップが下に落ちた。

パリーーーンと音がして、カップが割れる。

「え!!?命さん!?」
デスク前のテーブルで作業をしていた白羽が、慌てて駆けつけてくる。
そして書類等を拾い、デスクに置く。

割れたカップを拾おうとすると、
「あ!白羽さん!危ないですから、俺がします!」
慌てて黒崎が白羽を止める。

その光景を見て、命は直矢を思い出す。

「………」
「黒崎さん、大丈夫ですよ。
床も拭かないとですね。布巾持ってきますね!」
キッチンへ向かう白羽。

「……やめろ……」
「ですから、そうゆうことは俺が……」
黒崎も白羽の後を追いかけていく。

そして戻ってきた白羽と黒崎が、一緒にカップの破片を片付けだす。
「白羽!!」
「え?命さん?」
「白羽はそんなことしなくていいんだよ?
クロに任せて、ここに来て!!」
命は自身の膝の上をポンポンと叩いて言った。

「え?で、でも…」

「白羽は何の為にここにいるの?」

「え?」

「何の、為に、ここにいる?」

命の瞳が…雰囲気が…徐々に、真っ黒に染まっていく。
「命さんの…傍に、いる為です……」

「だよね?だったら、どうするべきかわかるよね?
今から白羽は俺に、何をして、何を言えばいいか……」

白羽はゆっくり命の膝の上に跨がり、命に顔を寄せ口唇を寄せた。

「命さん…好き……」
と言って、命の口唇に重ねた。

もう白羽は“神石 命”から、脱け出せなくなっていた。