この時期の田んぼは、収穫の月とも呼ばれていることから、稲がパンパンに膨らんでおり、その重い(こうべ)を下げている。その様子が黄金に見えるのだ。

「今は収穫の月ですから。そろそろ稲刈りが始まりますね」
 とモイラもアスカリッドの言葉で返す。
 プーランジェにもお米を食べる習慣はあるが、そのお米の大部分はアスカリッドからの輸入に頼っている。
「やはりアスカリッドの農業は素晴らしいわね。アスカリッドのお米とプーランジェのお米を食べ比べたら、それがわかるわ」

「そんなことをおっしゃるのは、お嬢様くらいですよ」
 嬉しそうにモイラは笑っている。母親の母国のことを褒められるのは、やはり嬉しいのだろう。
 女性二人の会話に耳を傾けていたボイド公爵ではあるが、この二人がアスカリッドの言葉で話をしているため、内容は理解できていない。ただ、金色とか稲刈りとか農業とか、そういった単語はわかった。
「モイラ。もしかしてアスカリッドの言葉で話せば、お父様はわからないかもしれないわ」
「だからって、例の話をこの場ですることは控えてください」
 アスカリッドの言葉でモイラに釘を刺されてしまった。