消えた未来
「うわ、もう次の講義が始まる時間だ。真央ちゃんは空いてるんだっけ」

 月渚ちゃんはスマホを見て言った。

「というか、今日はもう帰れる」
「そっか。じゃあ、また明日。あ、相談はいつでも受け付けてるからね。とにかく、気にしすぎたらダメだよ」

 月渚ちゃんはそう言い残して、席を離れた。

 一人になって、月渚ちゃんの言葉を思い返す。

『好きな人と楽しいことがしたくてしたことは、自分勝手な行動じゃないよ』

 それに感化されたか、久我君に会いたいという気持ちが強くなりつつあった。

 そして、この勇気が萎んでしまってはいけないと思い、そのままの勢いで星那に連絡した。

【どこの病院で久我君を見かけたか、教えてほしい】

 送って、その文章を読み返す。

 私は、勢いでなんてことをしてしまったのだろう。

 込み上げてきたのは、後悔だった。

 星那が見てしまう前に、取り消しておこう。

【奈穂さんが働いてるところ】

 それよりも先に、返事が来てしまった。

 知ってしまった。

 でも、まだ選択肢は残されている。

 知ったからといって、行かなければいけないわけではない。

 だけど、頭では行かないという選択肢を選んでいるはずなのに、体は行動を開始していた。
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