消えた未来
第十三話
 突っ走って病院に来たのはいいものの、どうすればいいのかわからず、入り口で立ち尽くしていた。

 星那は、確かにここで久我君を見かけたのだろうけど、今も久我君がここにいるとは、一言も言っていない。

 ここで会える保証なんて、されていない。

 それに気付かずに来てしまうとは、勢いというものは恐ろしい。

 帰ろう。

 そして、教えてもらえるかわからないけど、お姉ちゃんに聞こう。

 そう思って踵を返すと、高瀬先生がいた。

 お互いに目が合い、固まる。

 先に表情を崩したのは、高瀬先生だった。

 しかし、高校時代のときのように睨んできたわけではない。

 まるで助けを求めているような、そんな目をしている。

「織部さん、侑生に会いに来てくれたの?」

 来たの、ではなく、来てくれたの、と言った。

 その言い方が、高瀬先生らしくないと思った。

 あんなに、私が久我君と関わることを嫌がっていたのに、どういう風の吹き回しだろう。

「いや、私は」

 昔の慣れだろうか、私は否定しようとした。

 でも、先生の言った通りの理由でここに立っているから、否定できなかった。

「侑生、今ここに入院してるの」

 先生は私の話を聞かず、私の腕を引っ張っていく。

 言われずともわかる。

 これは、久我君に会ってしまう流れだ。
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