タングルド
番外編 兄弟の会話
番外編 兄弟の会話

Crowで賢一と新二がカウンターに座っている。

「仕事は慣れたか?」

「毎日が勉強だよ」

「橘社長はかなり厳しいからな、でもそれはお前のせいであり、お前のためでもある」

「わかってる」

新二は手に持ったグラスを目の前で軽く揺らすとカランと氷がなった。

「ずっと兄さんに劣等感と妬ましさを感じてきた。兄さんは、両親からの期待を一身に受けて、それに応えて。勉強ができるから父さんの信頼を受けていると思っていた。でも、本当は期待や信頼を受けるために誰よりも努力していたんだよね」
「オレはそんなことにも気が付かず、兄さんは全てを持っているから、オレが何かをしてもらうのは当然のことと思ってきた」

賢一は何も言わずに新二の言葉に耳を傾ける。
ガラスの小皿に盛られたミックスナッツのカシューナッツをつまみ上げると、前歯でかリッとかじった。


「子供の頃、兄さんも彩ちゃんのことが好きなんだと思ってた。だから、彩ちゃんだけは兄さんに渡したくないと思っていたのに、彩ちゃんが兄さんに告白をして断られたと言う話を聞いて、彩ちゃんが兄さんのものにならないんだと思ったんだ。何でそんなふうに思ったのかわからないけど、今、思うと兄さんに負けたくないという一身で“兄さんのものにならない”彩ちゃんを手に入れれば、兄さんに並べると思ったんだ」

「変だよね」


「今は?」

「変だったって気づけた」

「そうか」

「彩ちゃん、今はISLAND住販でパート従業員として働いてる。オレもまだ全然使い物にならないけど、彩ちゃんも働いたことがないから、すごく苦戦してるみたい。宅建も取得するっていって勉強してるようだよ」

「新二は彩香さんとの未来を考えているのか?」

「今回の事で、全てを無くした彩ちゃんが可哀想だと思う。だから、助けてあげられることは手を貸してあげたい。兄さんにお願いしたような身の丈に合わないような支援はしないけど」

「・・・」

「でも、前の様な感情は無いんだ。きっと、彩ちゃんを許せないのかも」

「多分、それが普通の感情だと思うよ」

「兄さんは、結納が終わって本当の婚約者を得たわけだ」

「なんか、新二も憑き物が落ちた様だな」

「ISLAND住販でしっかり頑張って、森川住販での負債を返すように、父さんにも兄さんにも認められるように頑張るよ」

「期待してる」

二人はグラスを重ねると、カランとお互いの氷がなった。
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