キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です

前途多難です


「茉緒、ここはどうだ?」
「うん、そだね……」
気のない返事にお兄ちゃんは肩を竦め、担当してくれた不動産屋さんにほかにいいとこないのと聞いている。
不動産巡りを始めて今回が二度目。
今見てるのは2LDKの築浅物件。
少しキッチンが狭いけど、お風呂もまあまあ広いし部屋もそれぞれ六畳とリビングは十畳でふたり暮らしにはちょうどいいサイズ。
でも私は気にいるそぶりも見せずよく見ようともしないで窓を開け茹だる暑さの中そよぐ風に吹かれていた。
十件近く内覧して気に入った部屋ももちろんあったけど、私はやっぱりうんとは言わずずるずると引き延ばしていた。
それもこれも、やっぱり智成と離れ離れになりたくないから。
智成とはあの夜、誓い合うように抱き合い心をひとつにしたつもりだ。
だから離れ離れに暮らすことになってももう不安はない。
あの日以来、私たちはお兄ちゃんの目を搔い潜りこっそり手を繋いだり、隙を見てキスをしたり、ときに私を真ん中に飲んでいるときも床に着いた手でお兄ちゃんに見えないように小指を絡めたりした。
お兄ちゃんに隠れてふたり目が合うと悪戯っぽく笑い合ったりして、見つからないようにこそこそやるのはなんとも背徳感がありゲームのようで楽しかった。
お兄ちゃんには悪いけど私はやっぱり智成が好きだ。別れるなんて考えたくない。
いつかお兄ちゃんに私たちのこと認めてもらえるように説得したいと思ってる。
そのためにも一度お兄ちゃんの言うことを聞いて智成の家から出た方がいいと智成とも話し合った。でもやっぱり離れがたくて寂しくて、ついつい部屋決めを渋ってしまう。

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