廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
第四章
1、観劇当日

『アルカディア劇団 レグナント公演、開催』

チラシに大々的に書かれた文字を見ながら、私は馬車の中で大興奮していた。
本日、楽しみにしていた観劇が漸く実現する。
隣に座るおばあ様も、どことなくソワソワしているみたいだ。

「楽しみですね、おばあ様!」

「そうね!過去に何度かアルカディアの演劇を見たけど、とても素晴らしかったわ!」

「まぁ!それなら間違いなく面白いですね!」

私たちの会話を、前に座るダリオンは無言で聞いていた。
誘っても来ないだろうと思っていたダリオンは、案外あっさり誘いに乗った。
そして、ちょうど良い機会だからと、アルカディア国の歴史について事前に教えてくれたのである。

ーー東の国、連合国家アルカディア。
その歴史は古く、一説では世界を造りし神が降り立った地として文献に残っている。
大陸の大体真ん中にあることから、文化芸術、貿易の交差地点として、発展してきた。
しかし、その昔、王太子の暗殺未遂事件で揉め、政情不安に陥ったこともあるそうだ。
その事件で一時姿を隠していた王太子が今、アルカディアの国王になっている。
現アルカディア国王シルヴェスター。
彼は非常に優秀で、何十とある部族を短期間で纏め上げ、連合国家アルカディアを復興させた。
世界各国とも綿密に連携をとり合い、賢王としても有名だという。
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