オトメは温和に愛されたい
温和の初めて
 温和(はるまさ)とそういうことになった後……、私はそのまま彼の部屋に泊まってしまった。

 というより寝落ちして目覚めたら明け方だったっていうべき、かな。

 寝返りを打とうとしてふと違和感に目を覚ましたら温和(はるまさ)の腕の中で……お互い裸のままだった。

 昨夜の雨音が嘘みたいに外は静けさに包まれていて、時計を見ると4時――。

(朝の……だよね?)

 今日は仕事の日。
 6時までには自室に戻って支度を始めないと。

 そんなことを思いながら、温和(はるまさ)を起こさないよう気をつけつつ恐る恐る布団の中を覗いてみる。薄暗くてハッキリとは見えないけれど、初めてだったから……きっとシーツ、汚してしまってる……。

(うー、このままってわけにはいかない気がする)

 何より自分のせいでって思うと、すごく恥ずかしい。

 温和(はるまさ)に気づかれないうちにこっそり洗濯してしまいたいっ。けど、その温和(はるまさ)がくだんのシーツの上に乗っかってるから無理で……。

 どうしよう。

 そんなソワソワした私の気配に温和(はるまさ)が目を覚ましてしまったみたいで、「音芽(おとめ)、起きたのか?」と声がかかった。

 私は思わずビクッとしてから、恐る恐る「シーツ……汚れたよね。……ごめんなさい」って消え入りそうな声で謝ったの。

 血とか……絶対落とすの大変だって思ったら温和(はるまさ)に申し訳なくて堪らなくて。

 なのに彼はすごく優しい声で「そんなの気にしなくていい。って言うか俺の責任でもあんだろ?」って言ってくれたの。

 優しく頭を撫でてくれる温和(はるまさ)の手が、子供の頃を彷彿とさせられて滅茶苦茶くすぐったい。
< 159 / 433 >

この作品をシェア

pagetop