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二日後。
無事退院することになったわたしを正面玄関まで見送ってくれたのは、尽と看護師のイシダさんだった。


「幸生ともども、大変お世話になりました」


車いすの上で頭を下げたのは、単なる礼儀からではない。
看護師を始めとした病院のスタッフには、わたしの入院中、幸生までも大変お世話になった。
わたしと離れるのを幸生が激しく拒否したため、病室に簡易ベッドを用意してもらい、親子三人で二泊したのだ。

特にイシダさんは、仕事の合間に幸生のおしゃべりに付き合い、絵本やおもちゃなどを小児科のプレイルームから持って来てくれ、といろいろ気遣ってくれた。

事故のショックから、普段とちがって見知らぬ人を警戒し、不安でいっぱいの様子を見せていた幸生も、笑顔で優しく声をかけてくれる彼女のおかげでだいぶ落ち着いた。


「マコちゃん、おせわになりました!」


そんな幸生は、わたしの真似をしてペコリと彼女へ頭を下げる。


「どういたしまして。おうちに帰ったら、ママのこと助けてあげてね? 幸生くん」

「うん! ぼくがママのお世話するよ!」

「頼もしいなぁ。それにしても……」


彼女は幸生の頭を優しく撫でつつ、含み笑いと共に尽を見遣る。


「尽先生のデレた顔を拝見できるなんて、貴重な体験でした」

「イシダ」


睨む尽を無視し、「あ! お迎えが来ましたね?」と言って、わたしの車いすを押して自動ドアを潜る。

迎えの車を運転していたのは、所長。助手席には吉川さんが乗っていた。