逆プロポーズした恋の顛末

わたしたちが言い争っているように見えたのだろう。

いつの間にか砂浜から戻った幸生が、心配そうにこちらを見上げている。
尽は、そんな幸生を見て何とも言えない表情をした。


「パパ、ママと喧嘩してるの?」

「してない」

「でも……コワイ顔してる」

「ねえ、尽。まさか……」

「ちげーよ」


被せ気味に否定した尽に、確信を抱いた。


「ねえ、尽? 正直に言いなさいよ。幸生にしっ……」

「ごちゃごちゃ言ってると、襲うぞ」


唸るように言った尽の唇が、わたしの唇に重なった。


(ちょっと尽! 幸生が見てるでしょっ!?)

「パパ! 見えないよ!」


一瞬、幸生の前で何をするのだと焦ったが、尽はどうやら幸生の目を大きな手で覆ったらしい。
抗議する息子へ、キスの合間に言い返す。


「見えなくていいんだ」

「なんでっ!?」


幸生のもっともな問いに、尽は大人気なく、きっぱりはっきり所有権を主張した。




「花嫁は、花婿のもの。ウエディングドレスを着ている間、ママはパパのものだ。諦めろ」




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