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(はぁ。やってもやっても終わらない……。際限ないし、腰も痛いし、やっぱり庭師を雇うべき?)


庭一面に広がる薔薇の海を見渡して、ひとりで世話をするのは無理がある、と改めて思った。

子どもたちが半分独立するまでは、尽を含めて男手が三つあったので、何とか自力で世話もできていた。

しかし、子どもたちが成長し、家を空けるようになった五年ほど前からは、ほとんどわたし一人で世話をしている。

世話が大変なら薔薇を処分してはどうか、と義父に言われたが、どうしてもそんな気にはなれなかった。


(忘れがたい記憶と一緒。二十年以上経っても……薔薇の美しさは、色褪せないわね)


薔薇を育てていた夕雨子さんは、ホスピスに入院した半年後にこの世を去った。

その翌年、彼女からこの家と薔薇を引き継いだ所長も、突然の心臓発作で亡くなった。

夕雨子さんが亡くなった直後は落ち込んでいたものの、立見総合病院で在宅診療の立ち上げに関わり、前日まで何ら変わりなく元気に働いていたから、所長が亡くなったと聞かされても、信じられなかった。


所長が亡くなったその日は、奇しくも、夕雨子さんが亡くなったのと同じ日だった。


もしかしたら、あらかじめ二人で約束していたのかもしれない。
そう言った義母の言葉は、単なる願望ではなく、事実だったのではないかと思う。

所長はその前日、「しばらく薔薇の世話を頼むかもしれない」と言って、尽に家の合鍵を渡していた。