赤い雫のワルツ






 さんざめく蝙蝠の群れが、羽ばたかせる翼の音色と共に、今日も今日とて悲鳴を引き連れてやってくる。


 またかと、その声に反応する事もなく、私は台所の右から三番目の棚に、常に控えている鈍く光る瓶を手に取った。


 今朝採れたばかりの新鮮なトマトで作った、自家製のトマトジュースが、瓶の中で小さく踊るように波打つ。


 綺麗に磨かれたワイングラスに注ぎ込めば、準備は万端。


 トレーの上にグラスを乗せて、私は肥えた月の月明かりに照らされただけの薄暗い屋敷の廊下を歩く。


 不気味な彫刻や絵画が、こちらを威圧的に睨みつけてくるけれど、私にも睨むべき相手がいるものだから構ってられない。



 扉の前に辿り着き、微かに開いた扉の隙間から中を覗く。






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