同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
微睡みの中の着信 #2

 盛大に頬を膨らませた私は、窓側に向かってふて寝状態だった窪塚とは真逆のウォークインクローゼットがある壁側に向かって、ふて寝を決め込み布団のなかに潜り込む。

 すると途端に、ふて寝状態だった窪塚が飛び上がるようにして起き上がってきた気配がしてすぐ、さっきの私と同じように布団越しに身体を揺すって機嫌を取ってくる。

「おいおい、そんな怒るなよ。俺だって鈴のこと怒らせたんじゃないかって気になって、必死だったんだからさぁ」

 先ほどの自分を彷彿とさせる窪塚の必死な様子に、怒ってたはずの気持ちが急激に萎えていく。

 それに、こんなことで、窪塚と一緒に過ごす貴重な時間を無駄にしたくないとも思う。

 けれども素直じゃない私はそんなにあっさりと許すことなどできない。

 否、正確にはもう許している。

 ただ一度吐いた言葉を引っ込めることができないだけだ。

「……だからってカマなんかかけなくても……」

 きっとそんなことも窪塚のことだから、全部全部お見通しに違いない。

 だから私が何を言っても、これまで同様になんやかんや上手いこと言ってきて、説き伏せてくるだろうと思い込んでいた。

「そうだな……ごめん。けど、カマかけてでも、鈴の気持ちを確かめて安心したいって思うくらい、俺はヘタレだし、鈴にベタ惚れだからさ。時々、怖くなるんだ。俺のことしか知らない鈴が他の男を好きになって、いつか捨てられるんじゃないかって」

 それなのに、急にシュンと気落ちしたような頼りない声音を響かせた窪塚の言葉に驚いた私は、被っていた布団ごとガバッと勢い任せに飛び起きていた。

 窪塚は、物凄い勢いで布団から飛び出した私のことを驚愕の表情で凝視してくる。

 窪塚の吃驚眼と視線がかち合った瞬間、私は起き上がった勢いのまま声を放っていた。

 本音を言えば、生まれて初めて本気で好きだと自覚した相手である窪塚に、こんなにも想ってもらえて凄く嬉しい。

 でも同じくらいに、窪塚には自信を持っていて欲しいし、私にとってどんなに大事な存在であるかをわかっていて欲しい。そう思うのだ。

 意地だとか、照れだとか、そんなものはどうだっていい。

 同じ気持ちでいるって事をしっかりと共有しておきたい。

 弱い部分をちゃんと見せてくれた窪塚だから、私もちゃんとそれに応えてあげたい。そう思ったからだ。

「はぁ!? 圭ってば何いっちゃってんの? いつか飽きられて、『こんな可愛げのない女うんざりだ』って捨てられるのは私の方だから。それに、私ヘタレな圭のことも好きだし。もし仮に圭が将来禿げたり太ったりしても私はずっと圭のことが好きだって断言できる。私のこと見くびらないでよね。失礼しちゃう。こんなに好きなのに。圭のバカッ!」

 こんなことでもなかったらこんなこと絶対に口になんてしていなかったと思う。

 きっと昨夜プロポーズされて、これから結婚して同じ未来を歩んでいこうと決めたから、これまでとは違ってきたのかもしれない。

 そうやってこれからゆっくりと私たちなりに歩み寄って夫婦になって、いずれは強い絆で結ばれた家族になっていくのだろう。

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